Webにダニエル・カーネマンの意思決定プロセスを取り込もう
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日常の多くの出来事は無意識に行っている
例えば、トランペットの奏者はコンサート会場で無意識に自動的に弾けなければプロにはなれないし、同じ「弾く」でも初めて習う時は持ち方や指の位置、呼吸など様々なことを意識しなくてはなりません。
行動経済学者ダニエル・カーネマンは、前者のような直感的に高速で処理される思考をシステム1(早い思考)と名付け、後者のように知的活動を伴う思考をシステム2(遅い思考)と名付けています。
そして我々は日常生活の大部分を、システム1と呼ばれるこれまでの経験や知識に基づき直感的に判断をしています。頭を使わないと判断が難しい知的活動を担うシステム2は、システム1で処理が難しい場合に呼び出されます。
ということは、そもそもシステム1と呼ばれる「直感・印象・感覚」といったもので特定の情報に触れられることを踏まえると、サイトへのタッチポイントの折、その情報が直感的に魅力的であると感じてもらわなくてはなりません。
いわゆるバズを狙ったコンテンツを考える際タイトルで「煽りタイトル」などがこれほど浸透するのにはそういった背景があるでしょう。
そして日常生活においてサイトを見る時、そこには「サイトを見たい」というより「情報を知りたい」何らかのモチベーションがあり、そのモチベーションを満たすようなコンテンツ作りであることが欠かせないでしょう。
どこからサイトに訪問するか
興味深い調査があり、Facebookのマーク・ザッカーバーグを始めとするミレニアル世代においては、他の世代よりも人に聞くよりググるという傾向が高いようです。
ITに親しんでいる世代にとっては、何らかの悩みや課題、知的好奇心などがある際、身近な人に聞くよりも「ググる」ほうが専門性が高く、より的確に、客観的に、何より短期間で情報を得られることが多いことを知っているからなのでしょう。
そんなGoogle検索ですが、Internet Marketing Ninjasの2017年度クリック率調査によると、検索順位では以下のようなクリック率となっています。
- 1位:21.12%
- 2位:10.65%
- 3位:7.57%
- 4位:4.66%
- 5位:3.42%
- 6位:2.56%
- 7位:2.69%
- 8位:1.74%
これらの数値を一つの基準値とし、現在自分のサイトで獲得できている特定のキーワードの順位とクリック率とを照らし合わせ、クリック率の妥当性を見ることも大切ですが、ユーザーとしてはどこの情報を見てクリックを判断しているでしょうか?
一瞬のタッチポイントを大切にする
下の図は「ビール 種類」で検索した、Googleの検索結果画面となります。
赤枠が「個々の記事リンク」で、オレンジ枠が目に入る「情報のまとまり」になります。
いわば、ユーザーが僕たちのサイトと接点を持つのは、このごく僅かな一瞬で決まります。ユーザーにしてみれば、この瞬間に自分が意図した検索クエリと合致してそうなリンク先をクリックします。
ユーザーはどこを見るか
判断する情報としては、「タイトル」「更新日付」「description」「画像」「URL」「ページ内リンク」が表示されていますが、複数人にヒアリングしたところ「description」に相当する箇所を見る人が多いようです。
これは限られた画面スペースの中で、最もそのページにおける情報の詳細を知ることができるエリアだからではないかと考えられます。
SEO上は評価基準外となったこと、またページコンテンツ内の情報ではないことから、Webサイトを構築する際にはdescriptionは優先度が低く、ないがしろにされがちです。
実はこのdescriptionの箇所こそが、お店における正面玄関のようにとても大切なタッチポイントであり、僕らは「サイトに訪問するかどうか」が大きく変わってくる要所となります。そのことを知っていて本気で実践している人と、気づかない人との差は大きくクリック率にも差が出てくることでしょう。
ここまでをまとめるとサイト内の設計ももちろん大事ですが、サイトへの導線を考える上で
- ユーザーの意識を考えること
- そしてその感情こそが検索クエリとなること
- その検索クエリから魅力を感じるリンク先にすること
を意識するとユーザーとより良い関係を築けるかもしれません。
Facebookからはモチベーションが異なる
そして同じdescriptionはdescriptionでも、検索エンジン経由からのサイト訪問とはモチベーションが大きく異なります。
実は「未読いいね!」が多いFacebook
しらべぇ調査によると、3人に1人が記事リンク先を見ずに「いいね」を押しているようです。(自分もドキッとしたりするのですが‥)理由としては社交辞令であったり、読むのがめんどくさいなどが理由として挙げられるようです。
ただ、それもそのはず。自分が知りたい、ほしい情報ではないケースも多く、読むモチベーションが湧かないからといったことが理由として考えられます。
今まさに知りたいことであれば、少し長文でもスラスラ読みますが、興味が薄ければ(日常的にというより、その場において)短文であっても読む気力がなくリンクをそもそも押さないことでしょう。
そういった背景を考慮してのものかは定かではありませんが、Facebookにはエッジランクと呼ばれるアルゴリズムがあります。
ここでは詳しく内容に触れませんが、関連性の薄い人の記事はそもそも表示されないようになっており、「親密度(Affinity Score)」×「重み(Weight)」×「経過時間(Time)」の掛け合わせで値が高いほど自分のフィードに表示される可能性が高くなります。
そのアルゴリズムがある中での1/3は「未読いいね!」になるので、ある程度属性値が近くても受動的な情報は情報過多の中では見られないこともあることを心がけておいたほうがよさそうです。
ただ、これもGoogleのクリック率同様、いかにして興味を持ってもらうか、好奇心を誘うような見せ方を意識することで、クリック率も変わってくることでしょう。またFacebookでは動画マーケティングも効果的に活用できるので、検索エンジンより工夫の幅が広がりますね。
続いて、タッチポイントにおける最適化について触れてきましたが、全ては「記事コンテンツ」があってのもの。続いてはコンテンツについて見てみましょう。
ファーストビューで魅きつける
サイトを見る中で、普段どれぐらい直帰をしているでしょうか?
サイト訪問直後のページを構成するファーストビューの要素、これがまた大切です。
NAVERまとめには馴染み深い人も多く、とりあえず読み進めてみようとするかもしれませんが、何らかのモチベーションでサイトに興味を持っている人にとっては目的意識と近いコンテンツがそこの記事にあるのかどうか、が最も大切です。
ユーザーはすぐに離脱する
訪問直後に「ここには期待してるコンテンツはなさそう‥」と思われたら、わずか1、2秒もしないうちに離脱してしまいます。つまりファーストビューにおいて、そのユーザーに「受け皿となるコンテンツがここにはあるよ」、「読み進める価値があるから安心してね」と、瞬時のうちに期待を抱くことができるかどうか、が次のステップになります。
ということは、すぐ目につく「h1の見出し」「導入となるイントロダクションのテキスト」「画像」などの情報において、関連性の深さを伝えられるかどうかがポイントになってきます。
結論がコンテンツの最下部のみであれば、そこまで辿り着く可能性が限りなく低く、やはりページ上部において先に結論を端的に提示したほうが効果的でしょう。
その際、感情的に受け入れられるかどうかも大切ですので、書き手のキャラクター(立ち位置)や、一定のリズム感となる「余白」、文字量の多さ、言葉の誤字脱字、言い回し方なども読みやすさに関わってきますので、意識的に考慮しておくとよさそうです。
システム2において納得感を提供する
また、記事を読み進めていく中で
「あぁ読んでよかった‥!為になった。」
「このサイトは気になるからとりあえずブックマークしよう!」
そんな感情を持ってもらえたらこの上ないですよね。
サイトを提供する側からすると、顔が見えづらいWebにおいて、信頼感を得ることは大変です。この信頼感においては、もちろん感情的な側面も欠かせませんが、論理的にも腑に落ちることで、「このサイト(人)は、なかなか信頼できるかも」と、より関係性を深めることにつなげられます。
論理的に腑に落ちるとは
まず、論理的の「論理」とはgoo国語辞書を見てみると
1 考えや議論などを進めていく筋道。思考や論証の組み立て。思考の妥当性が保証される法則や形式。「論理に飛躍がある」
引用元 goo国語辞書
2 事物の間にある法則的な連関。
3 「論理学」の略。
と書かれています。論理的な構成には「思考の妥当性が保証される法則や形式」であることが求められます。
サイトにおいては、どんなことが挙げられるでしょうか?
一つには「文章の構造が破綻していないこと」つまり話の前後の脈絡がつながり、唐突感がなく順序立てて構成されていること。
また、話の根拠が感覚ではなく何らかの統計や調査結果に基づき説明されていることが挙げられると思います。
また先ほど、冒頭は結論からと書きましたが、結論を裏付けするには話の構成として、「その理由」と「そう考える根拠」が必要になります。
そこで話の構成としては「結論」「理由」「根拠」の構成で構成をしていくと効果的でしょう。